診療内容

神経眼科について

 

2022年6月14日火曜日に医療法人史修会の理事長で川崎眼科院長の川崎厚史先生が座長を務めて大塚製薬ウェブセミナーを開催いたしました。
一般演題に、美原つつじ眼科の院長である青松圭一先生が日常診療で遭遇する複視の症例について、神経眼科の基本から実践に至る講演をされました。
特別講演は東京大学医学部眼科学教室の准教授本庄恵先生に緑内障治療薬についての講演をして頂きました。

 

 

ダブって見える、ものが2つに見える、1つのものが上下に2つに見える、左右あるいは斜めなどにずれて二つに見えることがあります。これが複視です。複視は眼球運動が悪くなり、両眼の視線がずれて起こります。

左右の目は同じ方向を向いているのが正常です。左右の目は無意識のうちに共同運動を行い、左右の目で見た像を一つに融合させます。そのようにして、見たものはいつも、ひとつに見えるのです。

下を見たり横を見たりするとき、両方の眼球が一瞬で同方向を向きますが、その様な眼球運動には3種類の脳神経が働いて、眼球周囲の筋肉を動かします。その3つの脳神経は脳からの指令で、バランスを保ちながら左右の視線を揃えます。この視線のバランスがうまく働かなくなると、二重に見えます。

眼球を動かす3つの脳神経
動眼(どうがん)神経
滑車(かっしゃ)神経
外転(がいてん)神経
脳幹から出たこの3つの脳神経は眼球周囲の筋肉に命令を出します。この3つの神経のうち、1つでも働きが悪くなると、左右の眼球の動きのバランスが悪くなり視線がずれて、モノがダブって見えるようになります。

一番頻度高く障害されやすいのは動眼神経麻痺です。動眼神経に問題が出れば、上直筋、下直筋、内直筋という眼球を動かす筋肉の動きが悪くなります。それでものが2重に見えることになります。上まぶたを上にあげる上眼瞼挙筋という筋肉の働きも悪くなって、上まぶたが下がる眼瞼下垂が生じます。瞳孔を小さくする神経も、この動眼神経の中を走っていますので、瞳孔が広がる瞳孔散大が生じることもあります。

動眼神経の麻痺で最も気をつけるべき疾患は脳動脈瘤です。眼瞼下垂は脳動脈瘤が破裂しクモ膜下出血を生じる前兆です。できる限り早く脳外科を受診していただく必要があります。くも膜下出血を生じると命に関わるからです。

眼球運動障害から生じる複視の中には糖尿病が原因のこともあります。糖尿病による動眼神経麻痺では、瞳孔の神経が侵されないという特徴があって、瞳孔の大きさは正常で、左右差なく、対光反応は正常です。予後は比較的良好で、数ヶ月の治療で治ることが多いです。

複視の原因

単眼複視の原因
角膜疾患
屈折異常
虹彩切開術後
白内障などの眼疾患
大脳性多視症(まれ)
心因性

単眼複視はピンホールで消失するが両眼複視はピンホールで消失しない。

両眼複視の原因
眼位ズレ eye misalignment
① 両眼融像、輻輳・開散の障害
(単眼運動正常)
間欠性外斜視
代償不全性斜位
輻輳痙攣
開散麻痺
② 外眼筋の運動障害
(単眼運動異常)
筋疾患
神経筋接合部疾患
神経・脳疾患
眼窩疾患
大脳性複視
網膜対応異常
心因性

 

 

 

 

 

 

 

MRAで1.3cmの右内頚動脈瘤
診断は内頚動脈瘤による外転神経麻痺

 

脳動脈瘤の局在と脳神経障害
脳動脈瘤患者774例中930カ所の動脈瘤について調査
1 前交通動脈:28.3%
2 中大脳動脈主幹分岐部:22%
3 内頚動脈-後交通動脈分岐部:20.6%

内頚動脈は43個、この中の7個が海綿静脈洞内の動脈瘤

⇨脳動脈瘤が単独外転神経麻痺の原因となる症例報告も稀ではあるが存在する

 

外転神経麻痺
眼球運動障害の40%から50%を占め最も多い
外転障害による水平性の同側性複視がみられる
症状は遠方で増強
原因は虚血性、圧迫性、脳血管障害、外傷性、炎症性、先天性(特に小児)など
他の動眼神経麻痺、滑車神経麻痺に比べ圧迫性の頻度が高い
うっ血乳頭、くも膜下出血や髄膜炎では両側性の外転神経障害が見られることが多い
特にFisherフィッシャー症候群では両側外転神経麻痺から発症する

 

 

右内頚動脈海綿静脈洞瘻
診断はCCFによる上下複視

 

 

60歳から70歳代の中高年女性に好発
頭痛、結膜血管拡張(caput medusae)、網膜静脈拡張、眼球突出、眼圧上昇が高頻度
外眼筋麻痺は前部型では外転神経麻痺、後部型では動眼神経麻痺が多い
血管性雑音(bruit)があれば診断確定
CT、MRI: 上眼静脈の拡張、海綿静脈洞の陰影増強、外眼筋腫脹
磁気共鳴血管造影(MRA): 動脈と海綿静脈洞の描出
頸動脈造影(CAG): 動脈相で海綿静脈洞の造影
自然閉鎖しなければ血管内手術

前日の夕方から突然の複視
両眼で左を見ると2つに見える
既往: Afで抗血栓薬、抗凝固薬内服中

 

急性中脳梗塞
診断は中脳被蓋病変による動眼神経部分麻痺

 

 

動眼神経麻痺
完全麻痺では内転、上転、下転障害と眼瞼下垂、瞳孔散大が見られる
→正常な上斜筋の働きで第一眼位は下外斜視を呈する
原因は虚血性、脳血管障害、圧迫性、炎症性、外傷性、先天性(特に小児)など
特に瞳孔障害を伴えば脳動脈瘤を想起して画像検査や脳外科医へのコンサルトが必要
部分麻痺では各筋の麻痺の程度に差が見られるのが特徴
海面静脈洞前部障害による上枝麻痺/下枝麻痺
中脳髄内障害による動眼神経部分麻痺

 

 

上斜筋
眼瞼挙上筋
上直筋
内直筋
内頚動脈
海綿静脈洞
下直筋
外直筋
下斜筋
蝶形骨
上眼窩裂
斜台
エディンガー・ウエストファール核
中脳水道
外側副核
内側副核
中心副核

 

 

 

左視床下部の急性脳梗塞
診断は視床穿通動脈梗塞による垂直注視麻痺

 

 

 

 

 

 

 

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